介護:市場規模4兆円超、法改正で富裕層狙いの家事援助代行が拡大へ
プレジデント 2013/10/24 16:15 介護福祉ジャーナリスト 田中 元=文
主な介護サービスのプレーヤー
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■従業員の介護支援サービス事業拡大へ
2012年は、団塊世代がいよいよ65歳以上に差し掛かり、高齢化率を急速に押し上げた。このタイミングで介護保険法が改正されているが、同時に市場動向を左右する4回目の介護報酬改定も行われた。
介護報酬とは、介護サービス事業者が利用者にサービスを提供した場合、その対価として事業者に支払われる報酬。09年度の報酬改定では、リーマンショック後の経済対策の一環として、制度開始後、初となるプラス改定が行われた。
帝国データバンクが11年末に発表した「介護サービス・有料老人ホーム業の経営実態調査」によれば、09年度の事業者数は7022社と、05年度の約2.5倍に急増。09年度の売上高合計も、05年度から2倍近い約4兆2000億円を記録している。
売り上げのトップランナーは、業界の老舗として在宅介護から有料老人ホーム経営まで幅広いサービスを安定的に提供しているニチイ学館。強いブランド力で業績を伸ばすベネッセホールディングスが2番手だ。
成長著しいのが、居酒屋チェーンを展開するワタミの連結子会社である、ワタミの介護である。07年度からの2年間で70%近い売り上げ増を記録している。同じく子会社のワタミタクショクでは、高齢者向けの配食サービスも展開する。
介護サービス事業は介護報酬に依存する部分も多く、国の財政事情や経済政策の優先順位に左右されるリスクはある。実際、介護報酬改定の諮問機関である厚生労働省の介護給付費分科会では、東日本大震災にかかる財政出動の影響によって「プラス改定は難しい」という声があがる。
有料老人ホーム事業は、たび重なる規制緩和によって拡大するニーズを順調に取り込んできた。しかしながら、ここでも入居者の重篤化割合が高まれば、介護報酬への依存が高まる可能性がある。大手2社やツクイなど実績を積んできた企業、メデカジャパンのように複合的な介護サービスを組み合わせることで切れ目ない顧客確保を図れる仕組みなどがなければ、難しくなるかもしれない。
政府は介護保険財政の安定化に向け、重篤者を対象に生活支援と医療・看護を包括化したサービスへの重点化を図ろうとしている。このあたりは、早くから地域医療との連携ノウハウを確立してきたセコムなどが強みを発揮しそうだ。大手ドラッグストアが、重篤者の服薬管理ニーズと有料ホーム等の住宅提供をミックスさせた事業に参入する動きもある。
その一方、軽度者への家事援助や介護予防が給付から外れてくる兆候も見られる。ニーズの拡大は確実であるため、今後、保険外自費負担ができる富裕層を狙った家事援助代行企業と介護予防を担うフィットネス企業の提携なども考えられよう。
さらに、少子化・晩婚化の中で企業社員の介護負担が社会問題化しつつあり、人事労務からのアウトソーシングによって従業員の介護支援サービスを手がける事業なども有望視されている。
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最終更新日:2013/10/24 16:15